弦高とは何か
私が持っているいちばん高いギターはモーリスのM-603です。20年前に神戸の元町という商店街で当時5万円で購入したものです。
マーチンやギブソン、テイラーなど有名なギターを持ってみたいですが、他に必要なものが多くてなかなか手が回りません。みなさんもそうでしょうか?
いつもは、セカストで買った3000円のアリアやヤマハのサイレントギターを弾くことが多いのですが、M-603を久しぶりに弾いてみると何だか弾きにくい。
「最近押さえにくいなあ」と思って弦の具合を見てみると、案の定「弦高」がかなり高い感じ。測ってみると4.5ミリくらいあるんですね。
基礎知識
「弦高」(げんこう)とは、弦の下とフレットの間の寸法(ミリ)の事です。一般的には12フレットの位置で測定します。
20年も経つとネック(アコギのさおの部分です)も反ってくるわけで、弦とネックの指板の間が空いてくるんです。
直す方法は3つ
①ブリッジのサドルを削って全体の弦高を下げる
②ネックの反りを埋め込まれているトラスロッドという金属のシャフトを回して修正する
③その両方をする
です。
結果を恐れない猛者は自分でやって、たいてい後悔しますが、さすがに私は本職に任せることにしました。
リペアーの店に直接持ち込む手もありますが、信頼性を考えると大手の楽器店に持ち込むのが得策です。楽器店にリペアーマンがいる場合もありますが、小さな楽器店だとリペアー専門店に委託します。
私は、札幌の平岡イオンの中にある島村楽器さんにお願いしました。
受け付けてくれたTさんはギターに詳しい方で、軽い「順反り」と判断しまして、弦高も「2.5ミリ程度に調整します」とのこと。
基礎知識 順反りとは・・・アコギの弦の反り方には順反りと逆反りがあります。アコギを抱えた状態で自分から向こう側にネック(さお)が反るのが「順反り」その反対が「逆反り」です
2.5ミリという数字はフィンガースタイルの標準弦高ですので、よくわかった方だと思いました。
ここは大手ですが、リペアーマンは札幌の本店にしかいないとの事で、そこへ送るそうです。
さて、約1か月で戻ってきたM-603は、かなりサドルを低く削られていました。トラスロッドによる修正はあまりしなかったようです。
サドルを削って弦高を低くする方法
ここで、サドルを削って弦高を下げた方法について解説しましょう。
下はブリッジ・サドルの周辺を上から見た図です。サドルが弦を支えていますね。
このサドルは普通プラスチックでできていますので、割と簡単に削れます。
今度は、下の図はアコギの後ろ側からサドル部分を見た図です。良く見るとサドルって左が高くて右が低いんです。これは左の弦が太くて、右の弦が細い事が理由です。何の事か判らない?? って、よーく考えると判りますよ。
弦を全部外した状態で、このサドルを抜きます。挟んであるだけですから簡単に抜けます。
これからが、肝心なテクニック。このサドルの下側を削っていきます。削った分サドルの高さが低く鳴ります。それによって弦高も低くなるって理屈ですね。
でも、考えてください。離れた12フレットの位置の弦とフレットの間隔を2.5ミリにするにはこのサドルを何ミリ削ればいいのでしょうか?
4.5mmの弦高を2.5mmにしたければ、
(4.5-2.5)✕2=3.4mm 削ればいいと計算が出来ます。(三角形の面積の計算のようです)
0.4mmなんて削れませんわ! さらに想定の弦高になったかどうかは、また弦を張らないと確認できません。
とても自分でやる気は起こりませんねえ・・・
結果、弦高は3ミリまで追い込まれていました。 ぐんと弾きやすくなってます。 もう少し低いといいなと思いましたが、この辺が限界かも。あとはカスタムライトクラスの弦を張って様子を見ることにします。
というのも、弦が太いと張力が強いので、順反り方向にアコギのネックを曲げようとする力が強く働くのです。
もともと、この時代(2000年頃)のアコギは弦高が高めでした。 当時の背景はというと、国産ギターメーカーは本家のマーチンやギブソンのコピーから始まったわけですが、当時のブルーグラスやカントリーの演奏シーンで他の楽器に負けないように音量を出そうとすると、弦高は高くするのが得策だったということです。
外国の先発メーカーの仕様を踏襲した国産のメーカーも、弦高が高くなったという訳です。
費用は約12000円。 これであと20年は安心して弾けそうです(マーチン買えよお~)
さて、今回失敗したことがあります。というのも、M-603は弦が古くなっていたので新品のエリクサーに替えたばかりだったんです。
今回の調整では弦は全部外してしまうので再使用というわけにはいきません。もう一度注文してエリクサーを張ってもらうことになりました。
これから同じリペアをされる方は、お気をつけください。
トラスロッドを回して弦高を調整する方法
トラスロッドというシャフトを回して修正する方法も説明しておきたいな・・・と思います。
1)「順反り」 (じゅんぞり)
下の図はアコギをよこから見た図です。 どうですネック(さお)がグーンと反っちゃって、弦とネックの指板(しばん)の間が広くなってます。これを「順反り」(じゅんぞり)と言います。
結構オーバーに描いてますが、こうなると弦を押さえるのに苦労しますね。
逆ぞり
今度は、ネック(さお)が上の「順反り」とは反対にグーンと海老ぞっちゃって、弦とネックの指板(しばん)の間が狭くなってます。これを「逆反り」(ぎゃくぞり)と言います。
こうなると、弦がフレットに当たっちゃって、コードストロークで弦をかき鳴らすと、「ビーン」と弦のビビり音がして耳障り(みみざわり)です。
どちらも、修正するのは大変です。
修正するにあたっては、トラスロッドの解説をしておく必要があるでしょう。
この記事は書きかけなんですが、とりあえず。
ご自分でのトラスロッド調整はおやめになったほうがいいですよ・・・と書いておきます。